ボクシング

ボクシング世界王座認定団体はいくつ?特徴や違いと日本人チャンピオンは?

近年、井上尚弥選手や村田諒太選手の活躍もあり、様々なメディアでプロボクサーの話題を目にすることが多くなってきました。

 

各メディアでは王者クラスの選手が取り上げられることが多いかと思います。そして、選手が紹介される際には、必ず現在保持しているタイトルが紹介されるかと思います。

 

例えば、井上尚弥選手であれば現在、WBAスーパー、IBF世界バンタム級2団体統一王者です。また、昨年末に試合を行った井岡一翔選手はWBO世界スーパーフライ級王座に就いています。

 

そういった情報を目にしたときに、「WBAやWBOは何が違うの?」「ボクシングの世界王座認定団体はいくつあるの?」といった疑問が浮かぶこともあるのではないでしょうか。

今回の記事ではそういった疑問を解決していきたいと思います。

ボクシングの団体はいくつ?その違いやファイトマネーは?

teofimo lopez (@fimo1968) | Twitter

ボクシングの世界王座認定団体はいくつあるのでしょう?

ボクシングの世界王座認定団体は、一般にメジャー4団体と呼ばれる団体のことを指します。WBA、WBC、IBF、WBOの4団体です。よくメディアで目にするのは、ここで挙げた4団体の場合が大半と言っていいでしょう。単純に考えると1階級に4人の世界王者が同時に存在することになります。団体によっては正規王座とは別に、特別な王座を設けていることもあるため、実際には同一階級に4人以上世界王者が存在している場合もあります。

 

マイナー団体と呼ばれる世界王座認定団体もあり、そういった団体を含めると実は10団体以上存在します。しかし、まともに機能していない団体も数多く、マイナー団体の世界王座を獲得したとしても、世間一般に世界王者として認められることは全くと言って良いほどありません。

 

団体によってファイトマネーに差はあるの?

団体によってファイトマネーに差があるということはありません。
プロボクサーのファイトマネーは各団体から支払われるわけではなく、興行主から支払われるからです。主な収入源としては、チケットの売り上げ、スポンサー料、テレビ放映権料、アメリカであればPPV(有料番組の課金視聴サービス)の売り上げ等があります。

 

このことから分かるのは、プロボクサーのファイトマネーは、その選手の人気に大きく左右されるということです。興行収入が多ければファイトマネーも増えます。そのため、同一階級の王者でも人気の差が、ファイトマネーの差になってきます。

 

例えば、世界的人気ボクサーになりつつある、WBAスーパー、IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥選手は100万ドルを稼ぐ選手になりました。一方で、まだあまり世界に名が知られていないWBC世界バンタム級王者のノルディーヌ・ウバーリ選手のファイトマネーは、今のところ12万ドル前後と思われます。このように同じ階級で、同じ世界王者だとしても人気や知名度によってファイトマネーの金額に差が生まれるのです。

 

人気選手になれば、多くのチケットが売れ、多くのスポンサーが付き、PPVの売り上げも増加します。それがファイトマネーに直結してくるのです。

WBAとはどんな団体?その特徴とは?

TEIKEN.COM|WBA世界ランキング

出典:TEIKEN.COM

WBA(World Boxing Association 世界ボクシング協会)は最も歴史のある団体として知られています。WBC、IBF、WBOの3団体は実はWBAから派生した団体です。WBAはアメリカで発足した団体ですが、現在の本部はパナマとなっています。

 

WBAの最大の特徴はスーパー王座というタイトルが設けられていることです。スーパー王座とは他団体との王座統一に成功した選手、5度以上王座を防衛した選手に認定される王座です。しかし、その基準は極めて曖昧になってきており、条件を満たさなくてもスーパー王者に認定される選手が増えてきています。

 

近年、スーパー王者に認定される選手の傾向としては、実績を残した選手というより、これから実績を残して、さらに人気が出そうな選手に認定されている印象があります。

 

正規王者がスーパー王者に昇格すると、空位となった正規王者のイスを争う正規王者決定戦が行われ、新たな正規王者が誕生します。同じ団体で同一階級に2人の世界王者が存在することになるのです。

 

王者が怪我などで長期間防衛戦を行うことができない場合、暫定王座を設けることがあります。これは他団体でも行われていることです。しかし、近年のWBAはスーパー王者と正規王者が健在にもかかわらず、暫定王者を多くの階級で生み出したりと、不可解な運営が続いています。そして暫定王者もれっきとした世界王者として認められているのです。

 

1階級に2人、または3人の世界王者が同時に存在するとあっては、さすがにボクシングを昔からよく観ているファンでも困惑します。誰が最も強いのか分かりやすい運営をボクシングファンは望んでいます。

 

WBAの試合のルール!

・スリーノックダウン制(1ラウンド中に3度のダウンがあった場合、自動的にノックアウ トが成立する。ただしアメリカではフリーノックダウン制)
・ノックダウンした選手はゴングに救われない(ダウンのカウント中に3分を経過してもカウント続行)
・偶然のバッティングにより試合続行不能となった場合、4回までは引き分け(王座の移動は無し)。5回以降は、ストップしたラウンドを含めた採点(負傷判定)により勝敗を決する。
・試合中に採点を公表するオープン・スコアリング・システムは採用していない。
・どちらかに10点満点をつけるテン・ポイント・マスト・システム(10点法)
・どちらかに満点未満をつけるラウンド・マスト・システム。ジャッジがつけられるレフェリーによる減点前の最小点は7点。2007年以降は主に南米諸国で採用されているハーフポイント(10-9.5のように0.5ポイント刻みで判定を示す)を試験採用中(日本やアメリカなど一部の国では不採用)

引用:Wikipedia

WBAルールのポイントは、スリーノックダウン制が採用されているところです。余分なダメージを負わないよう選手の安全面が考慮されています。レフェリングもしやすいのではないでしょうか。

ハーフポイントを試験採用中とありますが、実際はどこの国でも全くと言っていいほど採用されていません。

ラウンド・マスト・システムとはジャッジが各ラウンドごとに優劣をつける採点方式です。10-10といった同点のラウンドが無いように採点を行います。

 

WBAのベルトを保持している日本人と話題の選手は?

こちらがWBAのベルトを保持している日本人世界王者です!

大橋ボクシングジム|Ohhashi Boxing Gym

出典:大橋ボクシングジム

・井上尚弥選手
2019年のWBSS決勝で、世界的ビッグネームのノニト・ドネア選手と激闘を繰り広げた末に勝利し、バンタム級のスーパー王者となりました。この試合はアメリカの権威あるボクシング雑誌である「The Ring」において、年間最高試合に選ばれました。

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出典:AsianBoxing

村田諒太選手
ミドル級のスーパー王座を保持しています。なかなか日本人には挑戦機会が回ってこない群雄割拠のミドル級で、少ないチャンスをものにし王座に就いています。ミドル級の日本人世界王者は過去に竹原慎二氏のみであり、価値あるタイトルと言えます。

 

出典:BOXING NEWS

・京口紘人選手
2団体統一王者経験もあったヘッキー・ブドラー選手から王座を奪い、ライトフライ級のスーパー王座に就きました。2連続防衛中で、未だ無敗の王者であり、京口選手自身がベルトの価値を高めています。

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世界で話題になっているWBAの王者は?

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出典:BoxingScene

ライト級のスーパー王者であるガーボンタ・デービス選手の活躍が最も目立ちます。24戦24勝23KOの無敗のハードパンチャーです。

WBCとはどんな団体?その特徴とは?

TEIKEN.COM|海外ボクシング情報

出典:TEIKEN.COM

WBC(World Boxing Council 世界ボクシング評議会)はWBAから分派した団体です。そのためWBAより新しい団体となりますが、現在の加盟国数はWBAを凌いでいます。本部はメキシコです。

 

WBCの特徴としては正規王座の他にフランチャイズ王座というタイトルがあります。WBCの世界王者として功績が認められた者のみフランチャイズ王者になれるようですが、基準は曖昧ではっきりしていません。フランチャイズ王者の権利も不明確です。そしてフランチャイズ王者が誕生した階級には、もうひとり新たに正規王者が生まれるため、このこともファンを混乱させています。

 

もうひとつの特徴は、WBCでは昨年、クルーザー級とヘビー級の間に、ブリッジャー級という階級が創設されました。90.72kg以上はヘビー級とされていましたが、90.72kg以上から101.60kg未満がブリッジャー級となり、101.60kg以上がヘビー級となりました。

 

他団体がWBCに倣ってブリッジャー級を取り入れるかはまだ分かりません。
実質無差別級であるヘビー級では選手の大型化が進み、近年では体格差が目立つ試合もよく行われています。安全面を考慮すると、他団体でもブリッジャー級を設けても良いのではと考えます。

 

WBCの試合のルール!

・フリーノックダウン制(レフェリーが「試合続行不能」と判断しない限り、1ラウンド中何度ダウンしても試合続行)
・ノックダウンした選手はゴングに救われない(ダウンのカウント中に3分を経過してもカウント続行)
・バッティングによる負傷があった場合、偶然の場合は1点、故意の場合は2点、負傷していない方から減点される
・偶然のバッティングによる負傷で試合続行不可能となった場合、4回終了までは引き分け。5回以降は試合をストップしたラウンドを含めたそれまでの採点。
・2006年より「オープン・スコアリング・システム(公開採点制度)」を採用。4回と8回(女子は7回)を終了した時点でそれまでの採点を公表する。
・どちらかに10点満点をつけるテン・ポイント・マスト・システム(10点法)
・各ラウンドの判定は極力差を付けるラウンド・マスト・システム

引用:Wikipedia

WBCルールの特徴はオープン・スコアリング・システムがあることです。4回終了時と8回終了時に、そのラウンドまでの採点が会場にアナウンスされるため、採点の明朗さがあります。

 

WBCのベルトを保持している日本人と話題の選手は?

こちらがWBCのベルトを保持している日本人世界王者です!

ボクシング】寺地拳四朗、相手の回復力に驚愕!来年はV10目指す - eFight【イーファイト】格闘技情報を毎日配信!

出典:イーファイト

寺地拳四朗選手
ライトフライ級のベルトを保持しています。7連続防衛中の安定王者です。ライトフライ級最強の呼び声もあり、世界的な評価も高まっています。

 

世界で話題になっているWBCの王者は?

Canelo Alvarez A Free Agent, Released from Golden Boy, DAZN Contracts - Boxing News

出典:BoxingScene

現在ミドル級でフランチャイズ王者となっている、カネロことサウル・アルバレス選手です。日本にも多くのファンが存在し、現役で最も稼いでいるボクサーです。

IBFとはどんな団体?その特徴は?

TEIKEN.COM|IBF世界ランキング

出典:TEIKEN.COM

IBF(International Boxing Federation 国際ボクシング連盟)は1983年にWBAから独立し、その後、徐々に躍進してきた団体です。本部はアメリカにあります。

IBFの特徴としては、前日軽量だけでなく当日計量も行っていることが挙げられます。当日試合に臨む選手が10ポンド以上増量していた場合、王者であればタイトルの剥奪、挑戦者であれば挑戦権を失効させます。

暫定王座に関しても、王者の負傷などの明確な理由がある場合のみ設けられ、曖昧な理由で暫定王座決定戦がセットされることはありません。やむを得ず暫定王座が設けられた場合は、正規王者の復帰後、速やかに統一戦が行われます。

指名試合に関しても、王者が期限内に防衛戦を行わなければ、たとえ人気選手だとしても容赦なくタイトルを剥奪します。過去には世界的人気ボクサーのサウル・アルバレスから王座をいとも簡単に剥奪したことがありました。人気は無くとも地道にランキングを上げてきた選手に積極的にチャンスを与えようという姿勢がうかがえます。

メジャー4団体の中で、最も厳格に運営されている団体なのではないかと思います。ファンからしても疑問に思うことがほとんどなく、非常に分かりやすい団体であると言えます。

 

IBFの試合のルール!

・フリーノックダウン制(1ラウンド中のノックダウン数に関わらず、レフェリーが続行不能と判断した時点で試合終了)
・ノックダウンした選手はゴングに救われない(ダウンのカウント中に3分を経過してもカウント続行)
・偶然バッティングにより試合続行不能となった場合、4回までは引き分け。5回以降は、ストップしたラウンドを含めた採点。
・試合中に採点を公表する「オープン・スコアリング・システム」は採用していない。
・ラウンドごと、優勢な方に10点満点をつけるテン・ポイント・マスト・システム。もう一方には比例して少ない点をつける。優劣がない場合は双方に10点をつける。

引用:Wikipedia

必要最低限のシンプルなルールです。IBFの場合はラウンド・マスト・システムではないところが特徴です。同点とするラウンドもあり得ます。

 

IBFのベルトを保持している日本人と話題の選手は?

こちらがIBFのベルトを保持している日本人世界王者です!

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井上尚弥選手
WBAとIBFの2団体でバンタム級の王座に就いています。IBFのベルトを奪った試合では、当時無敗の王者であったエマヌエル・ロドリゲス選手をわずか2ラウンドでキャンバスに沈めました。

 

ボクシング】岩佐亮佑がTKOで暫定王者に、タパレスの体重超過は番組が訂正 - eFight【イーファイト】格闘技情報を毎日配信!

出典:イーファイト

岩佐亮佑選手
現スーパーバンタム級暫定王者です。ニューヨークで行われたマーロン・タパレス選手との暫定王座決定戦でTKO勝利を収め戴冠しました。暫定ながら、海外で獲得した世界タイトルということに非常に価値があります。

 

世界で話題になっているIBFの王者は?

エロール・スペンス・ジュニアvショーン・ポーター

出典:BAD LEFT HOOK

WBC,IBF世界ウェルター級2団体統一王者のエロール・スペンス・ジュニア選手です。一昨年に運転中に大事故を起こしたものの、昨年に奇跡の復活を遂げました。復帰1戦目でいきなりタイトルマッチを行い、元世界王者のダニー・ガルシアを退けました。

WBOとはどんな団体?その特徴は?

TEIKEN.COM|WBO世界ランキング

出典:TEIKEN.COM

WBO(World Boxing Organization 世界ボクシング機構)は1988年にWBAから独立してできた団体です。本部はプエルトリコに置かれています。メジャー4団体の中では最も歴史の浅い団体です。

WBOは発足当初はマイナータイトルの域を出ないとみなされていた団体でした。しかし、90年代から2000年代にかけて人気を博したオスカー・デ・ラ・ホーヤがミドル級でベルトを獲ったことにより一気に知名度を上げました。その後も、ナジーム・ハメド、マルコ・アントニオ・バレラ、マニー・パッキャオなどの人気選手が次々とWBOのベルトを巻いたことにより、世界王座認定団体としての立場を確固たるものにしました。

WBOもIBFと同じく厳格に運営されている印象があります。WBOにもスーパー王座がありますが、WBOの場合は単純な称号です。他団体との統一などを成し遂げた王者に、より敬意を表して付けられる称号のようです。

 

WBOの試合のルール!

・フリーノックダウン制(ダウン回数を問わずレフェリーがダメージを確認の上でノックアウトか否かを判断する)
・ノックダウンした選手はゴングに救われない(ダウンのカウント中に3分を経過してもカウント続行)
・偶然のバッティングで負った重度の負傷により試合続行不能となった場合、4回までは引き分け。5回以降は、ストップしたラウンドを含めた採点。
・試合中に採点を公表するオープン・スコアリング・システムは採用していない。
・ラウンド・マスト・システム(各ラウンドの判定は極力差をつける)

引用:Wikipedia

IBFと同じくシンプルなルールです。WBOの場合はラウンド・マスト・システムが重要視されています。

 

WBOのベルトを保持している日本人と話題の選手は?

こちらがWBOのベルトを保持している日本人世界王者です!

10 facts you probably didn't know about... Kazuto Ioka

出典:AsianBoxing

井岡一翔選手
昨年末に試合を行った現スーパーフライ級王者です。井岡ジムを出てからは、アメリカ、マカオでの試合も経験し世界的な評価を高めています。アメリカのボクシング専門サイト「ボクシングシーン」では2020年の年間最高選手にノミネートされています。

 

出典:BOXING NEWS

中谷潤人選手
昨年、ジーメル・マグラモ選手との王座決定戦を制し、フライ級の世界王座を獲得しました。23歳にして21戦の経験があり、卓越したテクニックが評価されています。世界王者として今後の活躍をさらに期待したい選手です。

 

世界で話題になっているWBOの王者は?

WBOウェルター級チャンピオンのテレンスクロフォード写真:Mikey Williams.jpg

出典:MAX BOXING.com

ウェルター級の王者であるテレンス・クロフォード選手が挙げあられます。スーパーライト級時代は4団体統一を果たしています。

世界王者が4人?ボクシングは王座乱立している?

ここまで読んでいただいた通り、ボクシングにはメジャー4団体と言われている王座認定団体が存在しています。ひとつの階級で世界王者と呼ばれる選手が同時に4人存在することになります。

 

世界王者なのに「唯一無二の存在ではないの?」という疑問を持つ方も多いかもしれません。王座乱立と言われても仕方がない部分があります。しかし、例えばボクシング団体が1団体だったとしたらどうなるでしょうか。

 

ボクシングは世界中で行われており、競技人口はプロだけで2万3000人に上ります。その他の立ち技系格闘技の競技人口と比較すると格段に多い数です。もし1団体しかなければ、実力があっても世界王者どころか挑戦のチャンスすら掴めずに引退してしまうボクサーが続出してしまうのではないでしょうか。

 

そのため、世界王座認定団体が、現在のように4団体あっても良いのではと思います。そして、4団体の王者が一堂に会するWBSSのような世界最強決定戦が定期的に開催されれば、誰もが納得できるのではないでしょうか。

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